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Research

 

環境現象を空間体験へと立ち上げる

Environmental Phenomena

私たちが経験する自然の風景は、光と大気の相互作用によって生まれる動的な現象である。夕焼けの色の移ろいや、水面に揺らめく光は、散乱や屈折、反射といった作用を通して生じ、空間の知覚を絶えず変化させる。これらの現象は、時間や天候、環境条件に応じて変化し続ける。固定された形として存在するのではなく、光と環境の関係の中で立ち上がり続ける出来事として捉えられる。

Context

建築空間はこれまで、光や大気、環境の変化と深く関わりながら形成されてきた。アルヴァ・アールト、ユハ・レイヴィスカ、ピーター・ズントーの建築は、光と大気が装飾を超えて、空間の知覚そのものを形づくることを示している。本研究では、環境条件を単なる背景としてではなく、空間に能動的に作用する力として捉える。光や風、気象は、建築的な構造や素材を介して増幅され、新たな空間経験を生み出す。

また、日本の美学的伝統、とりわけ「空(くう)」に関わる空間概念にも着目する。物質と空隙の関係性の中で空間を捉える視点は、本研究の基盤の一つである。素材実験や現地調査、建築インスタレーションを通して、環境の力を空間現象として立ち上げるプロセスを探る。

Research Question

 

建築的な装置は、環境現象をどのように増幅し、身体的な空間経験として立ち上げるのか。

Research Framework

環境現象



​大気

建築的装置

 

構造

素材

光学システム

空間構成

環境の増幅

 

反射
屈折
拡散

空気の流動

身体的知覚

 

身体の動き
感覚的な気づき
身体性の存在
時間的な知覚

空間経験

 

空気を帯びた空間
奥行きの知覚
環境の存在感
変化し続ける状態

再び環境的現象の知覚へと循環する

Research Themes

環境現象​

 

建築は環境の力を顕在化させる媒体として捉える。光や風、大気は空間をかたちづくる能動的な現象である。これらは絶えず変化しながら空間条件に作用し、本研究の基盤を形成している。

環境の増幅

反射や屈折、拡散、空気の流動といったプロセスを通して、環境の力は変調される。建築的な構造や素材はその作用を引き受け、微細な環境のダイナミクスを増幅する。

建築的装置

 

構造、素材、光学システム、空間構成は、環境の力を媒介する装置として機能する。それらは空間を囲うためではなく、環境の作用を引き出し、空間として成立させるために配置される。

大気知覚

空間経験は、環境の力と身体の相互作用の中で生じる。光の変化や空気の揺らぎ、身体の移動が時間の中で重なり合い、環境のプロセスが感覚として立ち現れる。

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Method

 

本研究は、観察、実験、プロトタイピングを往復しながら進めている。フィンランドを中心に建築空間での調査を行い、光や風、気象条件が空間の知覚にどのように作用するかを記録している。また、自然環境の観察を通して、光や風の振る舞いを手がかりに、増幅装置の仕組みを検証する。反射や屈折、拡散、空気の流動といった現象を対象に、素材や光学的な実験を重ね、環境の力がどのように変調されるのかを確かめている。得られた知見は、3Dモデリングと物理的な制作を通して建築的装置へと具体化され、装置は、身体の動きや感覚的な関与の中で、空間の知覚として展開していく。

現地調査(建築・自然環境)

素材・光学実験

3Dモデリング

プロトタイピング

​​​

制作・組立

大気的な空間経験

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現地調査

素材実験

光学実験

3Dモデリング

プロトタイピング

制作・組立

Contribution

 

本研究は、環境現象を空間経験として立ち上げる建築的手法を提示する。建築的装置の開発と実践的な実験を通して、光や空気の動きといった微細な大気的作用が、空間を形成する力として現れることを明らかにする。
これにより、建築は静的な形態としてではなく、身体・大気・構築されたシステムの相互作用から立ち上がる動的な環境として再定義される。

1989

初期の感覚経験

岐阜で生まれ、10歳頃からは茅ヶ崎で育つ。身近な森や川、海、神社の風景との出会いを通して、風・音・温度・大気といった自然現象への感受性が育まれる。幼少期における度重なる転居を通して身の回りの建築空間に目を向けるようになり、9歳頃から建築家になることを意識していた。これらの感覚体験が、のちの空間探究の基盤となる。

Milestone: 環境への初期感受性

2012

建築的探究の始まり

2010年に専門学校である東京デザイナー学院インテリアデザイン専攻において、商業空間に関わるデザインの基礎を学び卒業。その後、進路を模索する期間と独学による準備を経て、2012年に多摩美術大学環境デザイン学科へ入学する。ここから、建築空間における空間知覚と環境現象の研究が本格的に始まる。

Milestone: 建築研究の開始

2013–2015

光を媒介とする空間の発見

照明デザイナーの内原智史、住職兼日本庭園デザイナーの枡野俊明との関わりを通して、光や見立てといった日本的空間美学への関心が深まる。『陰翳礼讃』に着想を得た照明作品《明暗境界線》(2013)で、JIA 建築家のあかりコンペ大賞を受賞。実寸空間作品《MIRAGE CUBE》(2015)では、モジュールシステムによる光学現象の構築と空間知覚の関係を探り、透光不透視の世界を完全に透明な素材によって立ち上げた。

Milestone: 光による空間実験の確立

2016–2018

空間実験の拡張

東京藝術大学大学院デザイン科に進学し、光による空間実験を本格化。空間アート集団「空間演出研究所」を共同設立し代表を務め、複数の大規模な公共インスタレーションを実現する。個人作品《SKY PATH》(2018)では、自然光による光学現象を、素材と構造による空間知覚の関係をさらに展開する。

Milestone: インスタレーションによる研究の深化

2018–2020

国際的探究と《Ripple》

同大学のデザイン領域の博士課程に進学し、マルタ島を拠点に欧州各地でフィールドリサーチを実施する。特にピーター・ズントーによるブラザー・クラウス野外礼拝堂における光の空間体験が、環境と身体の関係への視点を決定づける。《Ripple》(2020)を完成させ、空間を構成する要素として「空気感/光景/見立て」を提示し、博士号を取得。作品は、自然の力を再構成する建築として国内外で高い評価を得る。

Milestone: 博士研究と国際的評価

2021–Present

建築的装置の展開

同大学で建築領域における研究を継続し、構造実験と環境空間システムを横断的に扱う。アーティストデュオ OSOTO Lab. を設立し、制作と研究を並行して展開。2023年よりフィンランドでの滞在を契機に、ユハ・レイヴィスカやアルヴァ・アールトの光の建築を参照しながら、環境現象と建築の関係を再考してきた。現在は、建築的装置によって環境現象を空間経験として立ち上げる理論の構築を進めている。

Milestone: 理論と実践の統合

Selected Publications

2025  

西 毅徳
「Transforming Environmental Phenomena into Embodied Spatial Experience through Apparatus Architecture: A Case Study of Ripple, a Site-Specific Installation」
Advanced Design Conference 2025 Proceedings
ISBN 978-88-97977-94-0

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2021  

西 毅徳
「光が織りなす現象と空気感」

博士学位論文(東京藝術大学)
Thesis / Dissertation_02(1), 学位番号 12606-Kou-1033

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